2024.07.29
イオンレイクタウンの西側に位置する大相模調節池(以下、調節池)は、水害対策として2014年に完成しました。調節池は浸水被害から人々を守るだけでなく、水辺の景色を楽しむ場や、イベント会場として、多くの人に親しまれています。
「この水辺でおいしいビールを飲みたい!」という思いから生まれた、越谷初のクラフトビール「越谷水辺エール」。クラウドファンディングで目標額を大きく超える322万円を達成し、注目を集めています。このプロジェクトをリードするまちづくり会社「レイクアンドピース」の畔上さんと小林さんに、越谷水辺エールが生まれたきっかけ、水辺でのにぎわい創出への思いについて伺いました。
「越谷水辺エール」を作ろうと思ったきっかけを教えてください。
畔上順平さん(以下、畔上)
単純に、この水辺で乾杯できるビールがほしかったんです(笑)。越谷市が治水対策としてこの調節池を整備した際に、地域のにぎわいづくりの拠点にしようという構想がありました。行政だけでなく、私たち市民側でも何かできないかと考え、「Lake and Peace 2019」を自主開催したんです。
イベントを終え、打ち上げの準備をしているとテーブルに市販のビールが並んでいて、確かにおいしいけれど、なんか違うよねと感じたんです。関係者にビール好きが多いこともあり、水辺で乾杯できる越谷生まれのビールがあれば、越谷の豊かな水辺の存在をもっと多くの人に知ってもらえるんじゃないかと盛り上がり、「越谷ビールプロジェクト」がスタートしました。
プロジェクトはどのように進めていったのですか?
小林利恵子さん(以下、小林)
最初に、どんなテイストのビールにするか決めるため、イベントで市販のビール5種類の飲み比べアンケートを行い、1年ほどかけてビールの味や色を検討していきました。幸運だったのは、ビールの醸造は三重県伊勢市にある「ISEKADO(伊勢角屋麦酒)」さんが協力してくれたことです。
ISEKADOといえば、地ビールやクラフトビール醸造の先駆け的存在で、世界大会で何度も金賞を受賞するレジェンド的な存在ですよね。
畔上
本来であれば、私たちのような素人は相手にされないのですが、越谷と伊勢に特別な関係性があったんです。30年ほど前、伊勢神宮の式年遷宮があり、神宮内の旧板垣南御門を越谷にある久伊豆(ひさいず)神社の第三鳥居として拝領しました。伊勢の人にとっては、神宮のご神木が門外に出るのは考えられない特別なことで、これをきっかけに両市の交流が始まりました。
「水辺に集まる人たちとのつながりを深めるためのビールを、ぜひISEKADOさんに醸造してほしい」と伝えたところ、越谷と伊勢のつながりに共感してくださり、さらに越谷の水辺のポテンシャルにも期待いただき、コラボレーションが実現しました。30年前、旧板垣南御門の拝領に尽力した関係者の方々にも、とても喜んでいただけました。
ロゴやパッケージも素敵で、細部にまでこだわりを感じます。
小林
当初はデザインを公募しようと思っていたのですが、越谷のデザイン事務所の方から、「ぜひパッケージを作らせてほしい」と連絡があって。お菓子などのパッケージを手がけられるなど実績もあるし、何よりも熱意がすごくて。
畔上
彼も大のビール好きでした(笑)
小林
背景の柄は、デザイナーさんの知り合いで、越谷在住のテキスタイル作家さんが手がけました。よく見ると、久伊豆神社の鳥居、しらこばと、越谷いちご、越谷ねぎといった越谷の名産が描かれているので、探してみてください。
越谷水辺エールはフルーティーで、とても飲みやすいですね。
畔上
ありがとうございます。クラフトビールというと、クセのある味をイメージされるかもしれませんが、越谷水辺エールはペールエールでもかなりライトな仕上がりで、爽やかな味わいが特徴です。毎日飲んでも飽きないですよ(笑)
おかげさまで販売は好調で、缶ビールはほぼ完売。パッケージも好評で、越谷のおみやげとして購入される方も多いようです。次回の入荷は8月上旬の予定。水辺のキッチンカーだけで販売している生ビールは在庫があるので、ぜひ味わってください。
越谷水辺エールと一緒に販売している「越谷ボール」も、ふわっとした食感がいいですね。
畔上
ビールのおつまみにぴったりでしょ(笑)。越谷水辺エールが誕生したことで、コラボレーションの依頼をたくさんいただいています。越谷には飲食店も多いので、今後、ビールに合うおつまみがさらに増えていくと思います。
毎週末や祝日に開催しているイベントでは、地元の飲食店がキッチンカーでフードを提供しているので、越谷水辺エールと一緒に味わって、お気に入りを見つけてください。
これまで月に1回開催していた「レイク&マルシェ」を、5月から毎週土日と祝日に変更した理由を教えてください。
畔上
私たちの目的は、イベントを開催することではなく、日常を豊かにすること。今は週末と祝日だけですが、いずれは一年中開催したいと考えています。水辺でビールやアクティビティを楽しむことが特別でなく、日常の風景になれば、地域の暮らしはもっと豊かになり、幸福度の向上にもつながると思います。
毎週末・祝日のイベントでは、ペダルサップ&ペダルカヤック「Hobie(ホビー)」の体験もできるそうですね。
畔上
そうなんです。越谷市民の方々はイオンレイクタウンにはよく訪れますが、水辺に来る機会は多くありません。水上アクティビティを提供することで、水辺をもっと身近に感じてもらえたらうれしいですね。Hobieはハンドルやペダルがあり、ボートが安定しているので、初心者の方でも簡単に操作できます。2〜4人乗りのペダルカヤックなら、ペットの同乗もOKです。
小林
Hobieに乗って魚が見えると、子どもたちは大喜びしています。大自然には及びませんが、ここは海のように波がなく安全で、自然や水辺を感じる入口として、ぴったりの場所だと思います。
水辺の利活用として、今後の展望やアイデアをお聞かせください。
畔上
水上のアクティビティをもっと充実させたいですね。例えば、ブイを浮かべてコースを作ったり、海床(うみどこ)と呼ばれるあずまやを浮かべて、食事や会議、水上マーケットなどをしたりするのも面白いと思いませんか?
小林
高校では、生徒たちが自らテーマを決めて調べ、学ぶ「探究」という授業があり、この場所がそのフィールドになったらいいなと思います。環境、エネルギー、地域コミュニティなど、さまざまな切り口、テーマで学べる場として活用できたら素晴らしいですね。
イオンレイクタウンと一緒にしたいことがあれば教えてください。
畔上
レイクタウンアウトレットが増床し、多くのお客さまが来ているようです。館内で過ごして終わりではなく、いかに水辺まで足を運んでいただけるかが重要です。館内と水辺では楽しみ方が全く異なるので、循環する仕組みを作ることで一日中楽しめる場所になるよう互いに連携していきたいです。
最後に、メッセージをお願いします。
畔上
毎週末の「レイク&マルシェ」はもちろんですが、10月5日(土)・6(日)には、「レイク・アンド・ピース」の開催を予定しています。こちらも楽しみにしてください。多くの人に、水辺の魅力を知っていただく、きっかけになればうれしいです。